石 榴
死神は、日に二度、食事をする。
時間は決まっていないが、二度、は必ずだ。
そして、その食事は、人が言う、石榴を模したものだ。決して、石榴ではない。
本来なら、死神には食事は必要ない筈なのだが、いつの頃からかこの習慣が出来た。
上層部の目的は、分からない、が。
ただ、この食事が一種の気分転換になっているのも、事実、である。
「はい」
本日の支給分の石榴。一人一個は決まりで、食べないとペナルティが課せられる。
「あんがと」
相葉は、二宮から大振りのそれを受け取った。
いつもと同じ、奇妙な形の果物である。
「はい、翔君、潤君、リーダー」
一個一個丁寧に配るのは、今日は二宮の仕事だ。
皆、それぞれ礼を述べ、受け取る。
これは、習慣だ。
死神の好物が、石榴、と言うわけではない。そして、皆が好むわけでも。
この独特の甘酸っぱさを、嫌う死神も居る。
幸いなことに、この5人の中には居なかったけれど。
松本は、それを丁寧に取り、一粒を指先で摘んだ。
ルビーのような、赤い果肉。
本来の石榴には、種が存在するが、模しただけのそれには、ない。
奇妙なものである。
形も味も、本来のそれに模してあるのに、その果物が存続するための種の力を与えられていないのだ。
必要ないと言えばそうであるし、食べやすいと言えば、否定の言葉は見つからない。
「ねぇ、リーダー」
暫く、それを弄んでいた相葉が、ふと思いついたように口を開いた。
「"罪"、ってどんな味がするの?」
無邪気と言うのは、いっそ残酷だ、と二宮は思った。
決して口に出さないが。相葉の不躾な言葉に、その言葉をぶつけられた死神以外が固まったと言うのに。
「味?」
「うん。だって、いつも、色が違うじゃん。大きさとか」
櫻井は、周りを伺うかのように落ち着きがないし、松本は手元に視線を落としたまま動きもしない。
この話はタブーなのに、それをしている当人たちだけが気付かない。
「…色で、"味"は違うよ。多分、辛いとか甘いとか、苦いとか、そんなんだと思う」
死神の食事は、石榴しかない。だから、比べようがないのだ。
「美味しいの?」
「さぁ、不味いって分かんないし」
「そっかー」
「うん、そう」
大野は、手元の石榴を一口、齧った。
「ねぇ、」
「うん?」
「何で、"罪"を食べようと思ったの?」
ストレートな質問。それに、大野は動きを止め、初めて相葉を見た。
「…隠す場所、みつかんなかったから」
ぼそっと呟かれたそれに、流石の相葉も、動きを止めた。
「適当に貯めてた、"罪"の隠し場所に困ったて、口に入れたの。それで、害が無かったから」
淡々と話す大野に、二宮含め固まった四人。櫻井等、真っ青な顔をしている。松本は相変わらず表情が読めないが。
「…勇気あるねーリーダー」
「相葉さん、それは勇気って言うんでなく、無謀って言うんですよ」
呆れ顔で二宮は呟いた。
2008/11/10
倉澤さま、ありがとうございました!
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